相手を傷つけない「ポンコツ」の伝え方

「ポンコツ」と言いたくなる相手がいる、というところから話が始まります。

家族かもしれないし、恋人か、友人か、後輩か。 どう言えば角が立たないかを探しているということは、 関係を壊したくはないということでもあります。

だとすると、最初に確かめるのは言い方ではありません。


1. そもそも、言う必要があるか

言いたくなる動機は、だいたい2種類に分かれます。

動機伝える意味
困っている(実害が出ている)ある。ただし伝えるのは「ポンコツ」ではなく困りごとのほう
イラッとした(感情が動いた)ほぼ無い。伝えても状況は変わらず、関係だけ削れる

後者のときに出てくる言葉は、自分で思っているより強いです。 「ポンコツ」は語感が軽いぶん、言う側の抑制が効きにくいです。 軽い気持ちで言えてしまうのに、受け取る側には評価として届きます。

一晩置いて、それでも言う必要があるなら前者です。


2. 言うと決めたら、行動だけを指す

✕ 「ほんとポンコツだよね」
  → その人の全体についての判定になる。反論できないので、黙るか怒るかしかない
◎ 「予定を3回続けて忘れられて、こっちの段取りが崩れた」
  → 何が起きたかの報告。相手が対処できる形になっている

「ポンコツ」という言葉には、直しようがないという前提が入り込んでいます。 壊れた機械を指す言葉から来ているので、 どうしても「そういう性能なんだ」という含みが混ざります。

だから伝えたいことが「直してほしい」なら、その言葉は逆効果になります。


3. タイミングと場所

内容が正しくても、条件が悪ければ届きません。

  • **人前で言わない。**同じ内容でも、聞き手がいると相手は防御に入る
  • **失敗の直後を避ける。**本人がいちばん分かっている瞬間に重ねない
  • **一度に一つだけ。**まとめて出すと「前から思ってた」の話になり、収拾がつかない

3つ目がとくに崩れやすいです。 言うと決めた勢いで、関係ない過去の話まで出てしまいます。そうなると内容は全部流れます。


4. 冗談として使う場合

親しい間柄では、「ポンコツだなあ」が愛情表現として機能することがあります。 実際、この言葉が生き残っているのはその用法があるからです。

ただ、成立する条件は思ったより狭いです。

・相手が自分でも笑っている(黙って笑っていない場合は成立していない)
・その場に第三者がいない
・普段、その相手を評価する言葉も同じくらい出している
・立場が上下でない(上司から部下へは、冗談として成立しにくい)

最後の条件が効きます。 評価する権限を持っている側が言うと、冗談の形をしていても評価として届きます。 このあたりは「ポンコツ」と呼ばれるのはパワハラかで詳しく扱いました。


5. 相手が自分で「ポンコツ」と言っているとき

これは伝え方ではなく、返し方の話になります。

自称している相手に「そんなことないよ」と返すのは、反射としては自然ですが、 ほとんどの場合、効きません。

理由は、自称の「ポンコツ」が事実の申告ではなく先回りの防御だからです。 否定されると、防御が無駄になったぶん、かえって落ち着かなくなります。

返し方効き方
「そんなことないよ」△ 否定されると、次はもっと強く自称する
「またまた」(流す)○ 話題として重くしない。距離が近いなら有効
「どのへんが?」**◎ 具体に降ろせる。**たいてい相手も答えに詰まる
「私もだよ」○ 並ぶ。ただし相手の話が終わってしまうこともある

3つ目がいちばん効くことが多いです。 「ポンコツ」は具体を包んで隠す言葉なので、包みを開ける質問に弱いです。 開けてみると、実際には一件の失敗だった、ということがよくあります。


まとめ

  • 言いたい理由が感情なら、言わない。状況は変わらず関係だけ削れる
  • 言うなら行動を指す。「ポンコツ」には直しようがないという含みがある
  • 人前で言わない、直後に言わない、まとめて言わない
  • 冗談として成立する条件は狭い。とくに上下関係があるときは成立しにくい
  • 自称している相手には、否定より**「どのへんが?」**

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