ポンコツは死語か──使われ方が変わった10年
死語ではありません。
むしろ、使われる場面が増えている言葉になります。
死語だと思われる理由
「ポンコツ車」という言い方が、確かに古びました。
・車の性能が上がり、「壊れかかった車」を見る機会が減った
・「ポンコツ屋(自動車の解体業)」という業種名を聞かなくなった
もとの用法(モノを指す)が使われなくなったので、 語全体が古いと感じられています。
しかし、実際に減ったのは①(モノ)だけです。
増えたのは人への用法
現在の使われ方は4つに分かれています。
| 用法 | 状態 |
|---|---|
| ① モノ(ポンコツ車) | 減っている |
| ② 他称(あいつはポンコツ) | 横ばい |
| ③ 自称(私ポンコツなので) | 増えている |
| ④ 属性(ポンコツキャラ) | 増えている |
③と④が、この10年で明確に増えた側になります。
③自称が増えた背景
自分から「ポンコツ」と名乗る言い方が定着しました。
理由は、この語が自称に向いていることにあります。
・自称できる(「天然」は自称すると成立しない)
・失敗を先回りして申告できる=期待値を下げられる
・語感が軽いので、深刻にならない
近い意味の語で、自称に使えるものは意外に少ないです。 「無能」も「役立たず」も、自称すると場が重くなります。 その隙間に「ポンコツ」がはまった形になります。
(→自分を「ポンコツ」と言う人の心理)
④属性が増えた背景
創作の中で、キャラクターの属性名として定着しました。
完璧な人物に一点の抜けを作ると距離が縮まる、という設計が 広く使われるようになったことによります。
「ポンコツかわいい」という言い方が成立するのは、 この用法があるからです。
さらに新しい用法
近年は5つ目が出てきています。
「ポンコツムーブ」——自分から抜けた振る舞いを見せること。
・演じられる前提がある(天然は演じられない)
・配信・SNSから広まり、日常にも降りてきた
語が死ぬどころか、新しい派生を生んでいる状態になります。
若者言葉なのか
若者言葉ではありません。
1959年から使われている語で、当時の新聞小説がきっかけで広まっています。 (→「ポンコツ」の語源は車ではなかった)
ただし、③自称と④属性の用法は比較的新しいです。 この2つが若い世代を中心に広がったため、 「若者言葉」として認識されることがあります。
語は古く、用法が新しいという状態になります。
まとめ
- 死語ではない
- 減ったのは①(モノを指す用法)だけ
- 増えたのは③自称と④属性
- 「ポンコツムーブ」という新しい派生も生まれている
- 語自体は1959年から。若者言葉ではないが、新しい用法は若い世代から広がった
出典
- 『精選版 日本国語大辞典』(コトバンク「ぽんこつ」) https://kotobank.jp/word/ぽんこつ-632128 (2026年8月確認)
- 阿川弘之『ぽんこつ』1959年 読売新聞連載/1960年 中央公論社