ポンコツを演じる人たち──ポンコツムーブとは
「ポンコツムーブ」は、自分から抜けた振る舞いを見せることを指す言い方です。
配信やSNSでよく使われるようになり、そこから日常にも降りてきました。 「ポンコツ枠」「ポンコツアピール」も、ほぼ同じ範囲を指しています。
注目すべきなのは、この言葉が成立していること自体です。
「天然ムーブ」とは言わない
比べると分かりやすい。
ポンコツムーブ → 言う。演じられる前提がある
天然ムーブ → ほぼ言わない。演じた時点で天然ではなくなる
「天然」は自覚がないことが定義に入っています。 だから演じるとバレますし、バレた瞬間に「あざとい」に変わります。
「ポンコツ」にはその縛りがありません。 自分で名乗れますし、演じても矛盾しません。 自称として広く使われているのは、この性質があるからです。
何のために使われるのか
| 目的 | 中身 |
|---|---|
| 予防線 | 失敗する前に申告しておく。期待値を下げる |
| 距離を縮める | 隙を見せて、相手に構えさせない |
| 役割の確保 | 集団の中で「いじられる人」の位置を取る |
| 説明の省略 | うまくいかなかった理由を一言で片づける |
1つ目がもっとも多いです。
期待されなければ、届かなくても落差が出ません。 「私ポンコツなので」は、そのための事前作業として機能します。
効かなくなる場面
演じることには効用がありますが、効かない場面もはっきりしています。
1. 繰り返したとき
一度なら愛嬌ですが、繰り返すと責任を引き受けない宣言として届きます。 言っている本人には、その変化が見えにくいです。
2. 実際に能力が疑われている状況
すでに評価が下がっているところで自称すると、その評価を追認することになります。 場を和ませるつもりが、相手の判断を固めてしまいます。
3. 記録が残る場所
面談・評価・書面。ここで自称すると、そのまま残ります。 冗談として扱われる保証がない場では使わないほうがいいです。
4. 自分に効きはじめたとき
いちばん厄介なのがこれだと思います。
説明として使っていたものが、いつのまにか前提になります。 「どうせポンコツだから」で挑戦をやめる段階に入ると、 演じているのか、そうなっているのかの区別がつかなくなります。
演技として保つ条件
使い続けるなら、条件があります。
・実績を別に積んでいる(演じられるのは、演じなくてもいい人だけ)
・場面を選ぶ。内輪でだけ使う
・自分で信じない
3つ目が難しいです。 繰り返し口に出したものは、だんだん自分の認識に馴染んでいきます。
まとめ
- 「ポンコツムーブ」が成立するのは、ポンコツは演じられるから
- 用途の中心は予防線。期待値を下げて落差を消す
- 繰り返すと責任回避に見え、記録に残る場では不利になる
- もっとも大きいリスクは、説明が前提に変わること
関連
- 「ポンコツ」と「天然」の境目
- 自分を「ポンコツ」と言う人の心理
- ポンコツはモテるのか、モテないのか
- ポンコツな自分を受け入れるという選択