なぜ自分はポンコツになったのか
「昔はこうじゃなかった」という感覚には、たいてい根拠がある。
能力が落ちたわけではなく、条件が変わったことのほうが多いです。 何が変わったのかを分けて考えます。
1. 要求されるものが変わった
学生時代や前職では、一つのことを深くやれば評価されました。 社会人になると、同時に複数を回す能力が問われるようになります。
前:一つのことに集中して、質を出す
後:複数を同時に回して、全部を及第点にする
求められる能力が入れ替わっているのに、 評価は「できるかできないか」の一言で返ってきます。
だから、以前と同じ人が、同じように努力していて、 突然「できない人」になる、ということが起きます。
2. 教えてもらえる期間が終わった
新人のうちは、分からないことを聞けます。 数年経つと、聞くこと自体が「まだ分かっていないのか」に変わります。
分からないまま進む → やり直しが出る → 評価が下がります。
これは能力ではなく、質問できる余地が消えたことの結果になります。
3. 量が閾値を超えた
処理できる量には上限があります。 上限を超えると、質は連続的にではなく、急に落ちます。
80%の負荷 → 普通に回る
100%の負荷 → 少し雑になる
110%の負荷 → 急に破綻する(ミスの対応でさらに時間が減るため)
110%は100%の1.1倍の辛さではありません。 超えた瞬間に別の状態に入ります。ここが「急にポンコツになった」の正体であることが多いです。
4. 体が変わった
書きにくいですが、無視できない要素です。
- 睡眠時間が減った(生活の変化・家族の事情)
- 通勤時間が伸びた
- 慢性的な疲労が抜けなくなった
処理速度は、体の状態にかなり直接的に連動します。 気力の問題として扱われがちですが、そうではありません。
5. ラベルが付いた
一度「ポンコツ」と見られると、解釈のフィルターがかかります。
ミス → 「やっぱり」として記録される
うまくいく → 「たまたま」として処理される
実力が同じでも、評価だけが下がり続けます。 そして評価が下がると仕事が回ってこなくなり、経験が積めなくなります。
この5番目だけは、時間とともに実際の差を作ります。 最初はフィルターだけの問題でも、放置すると本物の差になります。
「戻れるのか」について
1〜4は条件の話なので、条件が戻れば戻ります。
5だけが違います。 ラベルは、同じ場所にいる限り自動では剥がれません。 剥がすには周囲に働きかけ続ける必要があり、それ自体が消耗になります。
場所を変えるのが最も速い、というのはこの点に尽きます。 評価はリセットされ、処理の癖だけが残ります。 (→ポンコツだと思ったまま転職していいのか)
原因を探すことの限界
最後に、この問い自体について。
「なぜ」を掘っても、対処が出てこない場合があります。
過去に理由を求め続けると、 変えられないもの(生い立ち・性格・体質)に行き着いて止まります。 そこまで行くと、それは反芻に近いです。 (→ポンコツな自分が嫌になる日のこと)
原因の特定は、次の一手が出るところまででいいです。 上の1〜5は、どれも「では何を変えるか」に接続します。 接続しない原因は、いったん置いていいです。